忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/09/21 12:08 |
【劇団ボーカロイド_04】がくぽ、歓迎される
連投第四弾。

みんなが歓迎パーティーを開いてくれました。
続きからどうぞ。



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

家に着くまでの間、がくぽは彼らに関する様々なことを聞いた。この世界には彼らと同じように作られ歌っているボーカロイドがたくさんいること。どんなマスターにつくかで大きく個性が出ること。彼らは仕事の時以外はキャラクター設定に縛られず自由に生活していること。そして、現在このパソコンに暮らしているボーカロイドはがくぽも含めて全て、他のマスターのところからやってきたこと。
「明日からは俺と一緒に社会科見学だよ。みんなが仕事してるところを見たり、グーグル検索したり、インターネットの中に入ったりするからね」
そうこうしているうちに、二階建ての一軒家の前に着いた。彼らはここで共同生活を送っているらしい。メーカーが異なるため、がくぽはこの家には住めないという。
「がっくん家はあそこだよ。あの瓦屋根の平屋」
道を挟んで左に、生垣に囲まれた日本家屋が見えた。
「さあ、めーちゃん達がお待ちかねだよ。入って入って!」
 
 
 
パーン!パパパーン!
リビングのドアを開けると同時に、クラッカーががくぽを出迎えた。
たくさんの折り紙でできた紙輪や花で飾られた室内。テーブルの上にはたくさんの料理が並び、笑顔のメイコと双子がジャージ姿で席に着いている。後ろにいたカイトも、いつの間にかジャージに着替えていた。4人のジャージは同じデザインだったが、色はメイコが臙脂色、双子が芥子色、カイトが藍色だった。
「ミク達はもうちょっとかかるみたいだから、先にジャージの贈呈式しちゃいましょ」
がくぽが疑問を口にする間もなく、レンがジャージを持って来る。彼らと同じデザインで、茄子紺のジャージだ。そしてその上には、「劇団ボーカロイド 活動内容」と書かれた薄い冊子が載っていた。
「うちのマスターはね、カバー曲メインであんまりオリジナル楽曲を作らないの。私達は歌を歌ったりPV出演することでお給料をもらえるんだけど、カバー曲ってオリジナル曲の約半額だから生活が厳しいのよ。で、うちのマスター以外のところに行ってPV出演やコーラス出演、二次創作の漫画や小説に出演して報酬をもらう『劇団ボーカロイド』を旗揚げしたわけ。このジャージは稽古着よ。外出する時は着ないから安心して」
「……なるほど」
「マスター以外からの仕事は基本的に劇団名義で受けてるの。ま、細かいことはそれ読んでおいて」
メイコがひとしきりしゃべり終わったのを見計らい、がくぽの前にレンが歩み出た。
「神威がくぽさん。あなたは本日より劇団ボーカロイドの一員となりましたので、その証であるジャージを進呈いたします」
神妙に差し出されたジャージを、レンに倣って神妙な面持ちで受け取る。傍から見れば何とも滑稽な儀式だ。
隣室で着替えてリビングに戻ると、初音ミクと巡音ルカも席に着いていた。それぞれが飲み物の注がれたグラスを持ち、メイコが立ち上がって音頭を取る。
「それでは、本日より神威がくぽがあたしたちの仲間に加わったことを祝しまして!」
「「「「「「「乾杯!」」」」」」」
 
他家のがくっぽいどに好物を聞いて回ったということで、握り寿司、お造り、筑前煮などの和食や、田楽、肉詰めなどの茄子料理がずらりと並んでいた。しかし、以前はバランス栄養食しか食べたことのなかったがくぽにとっては、どれも「モニター越しには見たことのある料理」ばかり。一口一口が新鮮な驚きと感動に満ちた味であり、食事とはこんなに幸せになれるものなのかと素直に感想を述べたところ、料理を作ったメイコとカイトはとても喜んでくれた。
左隣に座ったミクは、まだここへ来て半年も経たないのに劇団一の稼ぎ頭だという。緑の長い髪をツインテールに括って鶯色のジャージを着た彼女は、これまで出会った様々なボーカロイドの話や、仲間達の性格、得意なジャンルなどを面白おかしく話した。
双子は唐揚げを取り合い、ウニを取り合いと大騒ぎ。仲裁に入ったカイトがレンの言い分を聞いているうちに、リンが彼のアイスを半分食べてしまった。それを見てカイトはがっくりと肩を落とし、大笑いしたレンはいつの間にかリンとウニを分け合って食べていた。そんな3人にケラケラ笑いながらちょっかいを出すメイコは、気がつけば焼酎を一瓶空にしている。顔は随分と赤い。
そんな中、ミクの左隣で一人だけ会話に加わらず、険しい顔で黙々と箸を進めている桜色の髪の女性。ルカだ。とても声を掛けづらい雰囲気だが、彼女とはまだあまり言葉を交わしていない。落ち込むカイトを慰めにミクが席を立ったので、思い切ってがくぽはルカに声を掛けた。
「あの、ルカ殿」
「えっ?」
牡丹色のジャージを着たルカが、驚いたように顔をあげる。まさか話しかけられるとは微塵も思っていなかったようだ。
「な、何でしょうか」
「あ、いや……」
話しかけたはいいものの、会話が続かない。周囲の賑やかさに反して気まずい沈黙が流れる。
ふと見れば、彼女の前には握り寿司や刺身が載った皿が集められていた。しかし、そのどれにも鮪だけが欠けている。
「ルカ殿は、鮪がお好きなのか?」
「あ、ごめんなさい!ついいつもの癖で……」
普通に話しかけたつもりが謝られてしまった。がくぽが戸惑っていると、頬をほんのりと赤らめたルカが恥ずかしそうに話し始めた。何でも彼女は鮪が大好物で、食べることに夢中になるあまり無言になっていたらしい。
「ごめんなさい、今日はがくぽさんの歓迎会なのに」
あの険しい顔の理由がこんなことだったとは。
本気で申し訳なさそうにする姿を見て、思わずがくぽは笑ってしまった。
 
 
「やーだあーちょっと、がくぽお酒が足りないんじゃなーい?」
突然、酔っぱらったメイコががくぽの首をがっちりと抑え込んだ。息がかなり酒臭い。どうやらかなり酔っている。
「メイコ殿……?」
目は完全に据わっている。首を抑えている反対の手には、半分以上中身が入った日本酒の一升瓶。とても嫌な予感がする。
「がっくんずるい!俺もめーちゃんに抱きしめてほしいのに!」
「違うだろカイト兄!」
「お姉ちゃんNO!それNO!」
「がっくん逃げてええええええ!!」
周囲の叫び声も、メイコには聞こえていないようだ。ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、引き攣るがくぽの口に一升瓶の口を押し当てると、一気に垂直に立てた。
「―――――――――――っっ!!!!!」
「きゃー!がくぽさんしっかりしてー!」
がくぽの記憶は、そこで途切れている。
 
 
 
翌日、自分が何をしたのか全く記憶にないメイコは、ミクとレンにみっちり叱られた。

拍手[0回]

PR

2010/08/27 22:15 | ボカロ。

<<【劇団ボーカロイド_05】がくぽ、ファーストキスをする | HOME | 【劇団ボーカロイド_03】がくぽ、混乱する>>
忍者ブログ[PR]