連投第三弾。
やっとタイトルの劇団名が出てきました。
続きからどうぞ。
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「…………マジだよレン」
「…………マジだねリン」
「む?」
「「ほんとに『拙者』って言ったー!!!!」」
「な、何だ?」
突然大声をあげて跳ねまわる双子に、がくぽは動揺した。
「『拙者』だよ!うちのがっくんは拙者タイプだよー!」
「すげー!マジで殿だ!教科書に出てくるアレだ!」
袖を掴むわ、刀を触るわやりたい放題だ。どうやら、双子が興奮しているのは、がくぽの一人称のせいらしい。
「いや、マスターの前では一応イメージを尊重してだな……」
その言葉を聞いた2人は、急停止して振り返った。
「違うの!?最初っから業界人を気取ってるの!?」
「やだー!がっくんは『拙者』キャラじゃなきゃリンやだー!」
一変して目つきの悪くなる2人を、マスターが慌てて宥める。
『こらこら、あんまりがくぽを困らせるんじゃないの。がくぽも、キャラとか意識しないで、のびのびやってくれればいいからね』
「はあ……」
混乱するがくぽをよそに、今度はカイトが服を脱ぎ始めた。
「めーちゃん、やっぱり公式服は暑いよ。俺溶けちゃうよ。アイスちょうだい」
「はいはい食後にね。ほら、リンもレンもご挨拶が終わったんだから着替えなさい」
「「はーい」」
不満げな表情を引きずったまま、双子は駆けて行った。
「メイコ殿、皆は普段はこの衣服を着てはいないのか?」
そうか、何も知らないのね、とメイコは戸惑うがくぽに向き直る。
「私達が今着ているのは、歌唱能力を最大限に引き出すものなの。レコーディングやPV撮影の時以外は滅多に着ないわよ」
「では、普段は何を着ているのだ?」
その問いに、上半身裸のカイトが答えた。
「もちろんジャージだよ!なんたって僕らは『劇団ボーカロイド』だからね!」
「げきだんぼーかろいど?」
目を点にするがくぽを見て、メイコとカイトは顔を見合わせた。
「マスター、まだ話してないの?」
『ああ、君達が説明した方ががくぽも飲み込みやすいだろうと思って』
「そうかもね。がっくん、自分以外のボーカロイドがいることも知らなかったみたいだし」
全く会話についていけないがくぽをよそに、2人はうんうんと頷き合っている。
『ま、そういうわけだからさ、2人ともがくぽをよろしくね』
「オッケーマスター」
「まかしといて」
「あの、マスター……?」
がくぽは話題から完全に取り残されている。
『がくぽはわからないことだらけだろうから、疑問に思ったことは何でもメイコに聞くといい。彼女はうちにいるボーカロイドの中で一番の古株だから』
「はあ……」
『じゃ、みんなお手柔らかにね』
そう言うと、彼らのマスターは通信を切断した。
「さ、私達も行きましょう」
言うが早いか、メイコはパタパタと駆け出した。
「待ってめーちゃん!ほら、がっくんも早く!」
ずっと立ちつくしていたがくぽは、カイトに手を引かれるがままに走り出す。
劇団ボーカロイドとは何なのか?頭の中を駆け巡る疑問符の渦にくらくらしていると、カイトが急に立ち止まり振り返った。危うくその背中にぶつかりそうになる。
「そうだ、がっくん本当は自分のこと何て呼ぶの?」
「え?」
「『拙者』はあくまでもキャラづくりでしょ?俺はがっくんががっくんらしくいられる方がいいな。リン達も最初は文句言うかもしれないけど、きっと気持ちは同じだよ」
にっこりと、大の男が人前で出すべきではないであろう純真な笑みを向けられて、がくぽは戸惑いながら答えた。
「俺、です」
「じゃあこれからはそれで。あと敬語も禁止ね。あっ、めーちゃん待ってー!」
そう言って、カイトはまた走り出した。上半身裸のカイトと手を繋いで走りながら、がくぽは緊張して強張っていた体が少しづつほぐれていくのを感じていた。PR