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2024/09/21 07:15 |
【劇団ボーカロイド_06】レン、もやもやする
連投疲れました。

レン視点です。リンと喧嘩しました。
続きからどうぞ。



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「ごちそうさま。がっくん、先に行ってるね」
夕飯を急いでかき込むと、リンは茶碗を流しに置いて走って行った。
「最近リンってば毎日がくぽの家に入り浸ってるじゃない。2人でこそこそ何やってるの?」
「申し訳ない。リン殿に固く口止めされている」
苦笑いして、がく兄も席を立った。最近2人で、がく兄の家で何かしている。でも俺は何をしてるのか知らない。俺達は今、喧嘩の真っ最中だ。
原因は、俺がリンの描いた絵を笑ったから。リンは絵を描くのは好きだけど下手くそで、よく楽譜の裏にいたずら書きしてるからいつもからかってた。あの絵だって、いつもみたいに何かの楽譜の裏に人間みたいなものを2つ描いてた。違ったのは、色を塗ってたことぐらい。黄色と黒で塗ってたから「それ踏切のお化け?」ってからかったら、リンは顔を真っ赤にして半ベソで色鉛筆を投げつけてきた。そのまま枕を引っ掴んで部屋を出て行って、それからはずっとミク姉の部屋で寝ている。この一週間、一言も口をきいてない。
「こないだめーちゃんとミクがもらったアクセサリーでも作ってもらってるんじゃない?」
「でも夜中に手芸の本読んでたよ。どんなに聞いても教えてくれないんだけどさ」
がく兄は超器用だ。俺が飽きて放り出してたプラモデルを30分で仕上げたり、メイコ姉の撮影用衣装をミク姉サイズに直したりと、手芸工作がめちゃくちゃ得意だ。本人も「細かい作業は指先の鍛錬になる」とか言って、どんどん色んなことに挑戦してる。
「レン君、あなたはリンちゃんから何か聞いているかしら?」
「知らない。ごちそうさまでした」
リンががく兄と何してるかなんてどうでもいい。先に無視したのはリンだ。物を投げたのもリンだ。リンが謝るまで、俺は絶対謝らない。
 
今日は午後から2人で買い物に出掛けて行った。俺は探偵気取りのミク姉に引きずられて、こっそり尾行することになった。
電車に乗って2人が向かったのは、大型手芸店。1時間くらいで、小さな袋をいくつか持って出てきた。それから喫茶店に入った。リンはでかいパフェを食べながら、すごく楽しそうにがく兄と笑ってたり、かと思えば2人で何かを覗き込んで話してたり。
「ただのデートじゃん」
尾行に飽きたミク姉がつまらなさそうに言った。デート。リンが、がく兄とデート。
「リンは、がく兄のことが好きなのかな」
思ったことがつい口から出てしまった。ミク姉は笑いながら否定したけど、俺は何だかもやもやした気分が晴れなかった。
 
リンがいない部屋は静かだ。静かすぎてつまらない。ゲームのシューティング音が延々と響いている。
買い物から帰った後、2人はすぐにがく兄の家に行ってしまった。今日のおやつはリンの好きなみかんゼリーだったのに。いつもだったらケーキの後でも大福の後でも絶対に食べるのに。
「なんだよ、リンのバカ」
もやもやして気分が悪い。ゲームもちっとも面白くない。全部リンのせいだ。
 
 
「レン、レン。起きて、ご飯だよ」
カイト兄の声がする。ゲームを投げ出したまま寝ていたみたいだ。時計は8時を指している。眠い目をこすりながら階段を下りると、リビングのドアの前でカイト兄が振り返った。
「レン、夕飯の前にリンが見せたいものがあるってさ」
「……俺興味ない」
「そう言うなって。リンとがっくんが今まで何をしてたか、知りたいだろ?」
「別に……」
「すごいんだよ、俺達みんなびっくりしたもん」
ニコニコしながらカイト兄がゆっくりとドアを開ける。
そこには、みんなに囲まれて、綺麗なドレスを着たリンがいた。メイコ姉達に綺麗可愛いと褒められて、嬉しそうにくるくるターンして見せたりしている。輝くような山吹色に、黒いレースがアクセントになっている。少し大人っぽい、でもリンによく似合うドレスだ。
「レン!」
一週間も無視してたくせに、ニコニコすんなよ。俺はどんな顔したらいいんだよ。
「どうよ!これでもまだ踏切とか言うつもり?」
「もしかして……あの時描いてたやつ?」
「縫ったのはほとんど全部がっくんだけど、リンだって今日頑張ってレースをつけたんだよ!」
ふんぞり返って得意げにふふんと笑った。
突然、横に立っていたがく兄から袋を渡される。
「こっちはレン殿の分だ。リン殿の絵を忠実に再現してある」
「俺の分?」
がく兄は大きな手で俺の頭をポンポンと叩いた。
「1週間前、リン殿が泣きながらこの絵を持ってきてな。レン殿に笑われた、一生懸命描いたのに、と」
渡された紙には、手を繋いで笑う2人の人間らしき絵、そしてその下に「リン姫 レン王子」と書かれていた。裏の楽譜は、マスターが作りかけて止まっている曲だ。王子が捕らわれの姫を助け出す、ファンタジー系の曲。
「……それで作っちゃうがく兄がすごいよ」
「何、いずれ曲が完成すれば必要になるものだ」
笑ってるけどうっすら隈ができてるよがく兄。よく見るとはしゃいでいるリンにもちょっと隈ができてる。
「早くレンも着替えて!記念撮影してマスターに見せるんだから!」
 
地下のレッスンスタジオを即席の撮影スタジオにして、2人で並んで写真を撮った。俺の服は、リンのドレスと配色を合わせた貴族のような服。かぼちゃパンツじゃなくてよかったと呟いたら、そんなのドレスと合わないもんと笑った。
「マスターは誰に歌わせるか決めてないって言ってたけど、これは絶対レンと歌いたいなって思ったの。だから、マスターが書きあげる前に衣装揃えてアピールしようと思って」
リンは照れくさそうにはにかんだ。一人で意地を張っていたのがあほらしくなる。
「……絵のこと、笑ってごめん」
「リンも、色鉛筆投げてごめん」
俺はリンの手をしっかりと握った。
 
 
翌日、1ヶ月以上も続きが書けなくて唸っていたマスターは、俺達の写真を見た途端「インスピレーションが降ってきた」と言ってあっという間に曲を書き上げてくれた。来週にはレコーディングに入れるように曲作りも進めてくれるらしい。
『動画にはもちろんこれを使うからね』
マスターはマウスポインタで俺達が手を繋いで笑っている写真を指した。

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2010/08/27 22:49 | ボカロ。

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