とりあえず、今ある分だけさくっと連投しておこうと思います。
大した量はないのですが。
がくぽが起動しました。
続きからどうぞ。
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コンコン。
……誰かが戸を叩く音がする。
目を開けて、音のする方を見る。
誰だろう。
呼んでいるのだろうか。
呼ばれたのならば、行かねばならんだろう。
コンコン。
覚醒しきらない体を揺すり、上半身を起こす。支えにした腕に鉛のような重みがかかる。
長い間眠っていたのだろうか。立ち上がろうとするのだが、なかなか思う通りに体が動かない。
やっとの思いで重力に逆らって立ち上がる。頭の中はぼんやりと靄がかかっているようだ。
そういえば、ここは随分と暗い。
ここはどこなのだろう。
自分は、誰なのだろう。
コンコン。
ああ、また。
頭の中の靄は晴れる気配がない。ならば、ここは外部情報に頼るしかない。
戸の向こうの物音に耳をそばだてていると、声がした。
『あれ、不良品掴まされたかな。これだから……』
『不良品』
その言葉に全身が震え、とてつもない不快感に襲われる。
やめてくれ。頭が痛い。吐きそうだ。俺を『不良品』と呼ばないでくれ。
体中を駆け巡る悪寒を振り切るように、乱暴に戸を開ける。
その瞬間、眩い光に視界が支配された。反射で閉じた瞼を、恐る恐る持ち上げる。
目に飛び込んできたのは、白い空間の上空を色とりどりの0と1が飛び交う世界だった。
互いにぶつかり合いながら、しかし全く速度を緩めることなく交錯するそれらには、うっすらと見覚えがある。
やがて0と1はめいめい勝手に集合し、構造物を形成してゆく。
壁。窓。天井。床。スピーカー。アンプ。マイク。スタンド。そして楽譜。
そうか。ここは音楽スタジオか。
プツッ、と音がして、目の前に大きな映像が映し出される。
そこに映っているのは、好奇心と不安が入り混じった目で自分を見つめている顔だった。
いや、覗き込んでいると形容した方が正しいかもしれない。
『もしもーし……?起動しましたかー……?』
ああ、そうか、そういうことか。
自分の手を、脚を眺める。白地に紫の装飾が施された羽織。白袴。右手には扇子。左脇には刀の形態を模した楽刀。視界の左右に揺れる、紫の髪。
そうだ。自分は。
「お初にお目にかかる、マスター。拙者、神威がくぽと申す!」
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