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2024/05/19 08:53 |
【生誕祭!】喜-3
トリコ誕生日テキスト、続きです。

明日はついにトリココダンスですよ!ボブココさんですよ!
もう楽しみで楽しみで仕方ありません!
トリットリットリットリココーーーーー!!!!










 開始のゴングが鳴り、戦いの火蓋が切って落とされた。一斉に「いただきます」と手を合わせ、各々ハンバーガーを頬張り始める。
 大きく口を開けてかぶりつくと、バンズとパティの間からトマトの風味の濃いソースが溢れ出した。角切りのタマネギの食感と荒挽きパティの相性は抜群だ。惜しむらくはピクルスの酸味がきついことか。もう少し甘みのあるピクルスの方がこのハンバーガーには合うはずだ。
「ほまっふん、へあほまっへうよ」
 口の中にぎゅうぎゅうに詰め込んだ鉄平に指摘され、はっと我に返った。そうだ、これは早食い対決なのだ。味を分析している暇があったら一つでも多く食べなければならない。急いで手に持っている分を口に押し込んで二個目の包みを開ける。トリコ達の様子はどうだろうと鉄平の向こうに目をやると、そこでは別次元の戦いが繰り広げられていた。
 彼らは一度に五個以上を口に突っ込み、二、三回の咀嚼で飲み込んでいる。溢れるソースもこぼれるパン屑も何のその。次々にハンバーガーが二人の口に吸い込まれて、石垣がみるみるうちに低くなっていく。まるで手品でも見ている気分だ。ただ、包み紙を開けるのが上手な分、トリコの方がゼブラよりも速いペースで食べ進めている。
 それでも、人数でいえばこちらが圧倒的に有利だ。小松は反対側の三人を見た。
「うぶっ……俺はもう腹一杯だ……」
「ええっ、まだ四個しか食ってませんよ!?」
「だから言ったのに……」
 ダメだ、彼らには頼れない。
 必死に口を動かしドリンクで流し込み、十分経過する頃には何とか十九個完食することができた。隣の鉄平はその倍くらい、ゾンゲは涙目になりながら五個目をちびちび齧り、手下の二人は合わせて三十個くらいを完食している。五人合わせても百個には到底届かない。
 そして彼らの前には満腹感以上の問題が立ちはだかっていた。味に飽きてしまったのだ。どんなに美味い料理でもそれだけを食べ続ければいつか飽きる時が来る。特に短時間で詰め込んでいるのだから尚更だ。トリコとゼブラのペースはまったく落ちていないが、こちらの手は止まりつつあった。
 背後の電光掲示板には両者の残数が点灯している。ゼブラと小松達は残り二百十七個、対するトリコは残り百八十二個。かなりの差が開いてしまっていた。
 どうしよう。このままでは負けてしまう。せっかくココが応援してくれているのに。
 一か八か、小松は賭けに出ることにした。
「あの、すみません。調味料で味付けを変えて食べてもいいですか?」
「え? はい、構いませんよ」
 司会者の承諾を得ると、小松はおもむろにポケットから小瓶を取り出した。手の中にすっぽりと収まる程度のそれは、まるで小さな太陽のごとく神々しい光を放っている。畳んだ包み紙に輝く粉末を少量振り出し、自分と鉄平の間に置いた。
 すでにうんざりした顔でピクルスをくわえていた鉄平は、小松が促すと怪訝そうに片眉を上げながらも粉末をパティの端にちょんと付けた。その部分を齧った途端、彼の顔は目を大きく見開いた驚愕の表情へと変わった。無言のまま鉄平は鬼気迫る勢いでハンバーガーを貪り始める。
 小松も意を決して食べかけのハンバーガーに粉末を付けて齧った。舌に触れた瞬間に激しい衝動が味覚を通り越して脳に直接訴えかけてくる。
 食べたい。もっと食べたい。
 包み紙を剥がす手間すら惜しくて、乱暴に破り取っては粉末を付けてかぶりつく。指の間から流れるソースなど気にしてはいられない。くしゃくしゃに丸めた包み紙を足元に放り投げ、次へ次へと手を伸ばす。
「おっと、これはどうしたことでしょう! 謎の光る粉を付けた瞬間から、再生屋鉄平と小松シェフが一気に加速しました!! あの粉の正体は!?」
「アレはメルクの星屑っつースペシャルにデリシャスな調味料だ。麻薬食材みてーなインチキじゃねってことはオレが保証するし」
 いつの間にマイクを握っていたサニーがさらりと解説した。余裕だったトリコの表情は焦りへと変わり、ゼブラも負けじと食べ進める。ゾンゲの手下達も最後の力を振り絞る。
 残り少なくなっていよいよ床の模様が見え始め、会場の興奮は最高潮に達した。トリコとゼブラが最後の一山へとほぼ同時に手を掛ける。
「三、二、一……ゼブラ完食!! トリコわずかに及ばず!!」
「よっしゃああ!!」
「ちくしょおお!!」
 終了のゴングと同時に会場は盛大な拍手に包まれた。
 拳を振り上げるゼブラの背中を見つめながら小松は放心状態だった。シャツが捲れ上がるほど膨らんだ腹の中にはいったいいくつのハンバーガーが収まったのだろう。もう一生分のハンバーガーを食べた気がする。ゾンゲの手下達もぐったりと座り込んでいる。白目を剥いて倒れている鉄平の姿にはさすがに罪悪感を覚えた。
 自分一人の力ではないけれど、とにもかくにもココの目の前でトリコに勝利することができたのだ。容姿、体格、技術、体力、経済力、ココと過ごした時間の長さ、ココから受ける愛情、そのすべてにおいてトリコに負けている小松にとっては偉大な勝利だった。
「どーだぁ! 見たか俺様の力を!! 賞品は俺様のもんだーっ!!!」
 唯一ピンピンしているゾンゲが意気揚々と司会者に駆け寄ろうとして、投げ出された鉄平の足につまづいた。派手に転んだ拍子に懐から何かが飛び出した。
 ……………………ん?
 会場中の視線を釘付けにしたもの。それは、きれいに包まれたハンバーガーだった。
「あっ、俺様の夕飯がっ」
 コロコロと転がったハンバーガーをゾンゲの目の前で拾い上げる大きな手。ほっとした表情でゾンゲが見上げた先には、地獄の鬼が一人残らず押し入れに逃げ込み布団を被ってガタガタ震えあがってしまいそうな憤怒の表情のゼブラが立っていた。
「チョーシこいてんじゃねえぞてめえええええええええ!!!!!!」
 爆音の怒鳴り声は窓という窓のガラスを木っ端微塵に吹き飛ばした。


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2012/05/26 22:04 | トリコ。

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