ギリギリ!ほんとギリギリ!
ゼブラさん誕生日おめでとう!
ごめんね一昨日まで3月9日だと思ってたよ!
今日急いでハピバテキスト書いたよ!全3話!
ちなみに、当ブログにおいて、ゼブラとサニーはノンケです。
ゼブラさん誕生日おめでとう!
ごめんね一昨日まで3月9日だと思ってたよ!
今日急いでハピバテキスト書いたよ!全3話!
ちなみに、当ブログにおいて、ゼブラとサニーはノンケです。
ボクは中華鍋をあおっている。かれこれ1時間近く、手を休める暇もなくひたすら料理を作り続けている。
こんな寒い夜は、石造りのこの家を心底恨めしく思う。暖房のないキッチンは足元から冷気が這い上がり、そのくせ上半身は炎や湯気にあてられて汗ばむほどだ。毎年足元用にヒーターを買おうと思いはするが、結局何枚も重ね着をしてしのいでしまっていた。
さっきからドア1枚を隔てて聞こえてくる、トリコの荒い息遣い。何とも悩ましげなそれが、ボクの聴覚をずっと刺激し続けている。
「ゼブラッ……き、きつい……」
「知るか。てめえが自分で下になったんだろうが」
「仕方ねえだろ! お前が無駄にでかいから!」
「褒め言葉にしか聞こえねえな。さっさとその邪魔な手をどけやがれ」
「やっ! やめろ! そこは無理! ほんと無理だって!! うあっ……!」
「ぎゃあぎゃあ喚くな。どうしようがオレの勝手だ。それとも、この程度でもうギブアップか?」
「誰に向かって言ってんだよ……お前の方こそ余裕こいていられるのも今の内だからな。サニー! 早くしろ!」
「や、オレ的にはもうちょいトリコのその顔眺めてーな。マジつくしいぜ」
「ってめえ……!」
くすくすと、サニーの笑い声が混ざる。
見たい。トリコがどんな顔をしているのか。切なげに眉を顰めているのだろうか。ぐっと歯を食いしばっているのだろうか。上気したこめかみに汗が伝い落ちているのだろうか。それとも。
「早く、しろって……こんなとこココに見せられねえよ……」
押し殺すような声にいてもたってもいられなくなり、出来上がった料理を手早く盛り付けるとボクは勢いよくドアを開けた。
ローテーブルを壁に寄せて、部屋の中央でくんずほぐれつ絡み合うゼブラとトリコ。分厚い筋肉の鎧を纏った2人の体は隙間なく密着し、ゼブラの下で喘ぐトリコの顔をサニーがニヤニヤと覗き込んでいた。
「……コ、ココ……」
潤んだ目に絶望の色を滲ませたトリコが、ボクを見上げていた。嗜虐心を煽り立てるセクシーな表情に釘付けになる。口角が歪んで吊り上がるのを抑えられない。
ああ、素敵だよ、トリコ。お前はそんな顔もするんだね。
「見るなっ……そんな目でオレを見ないでくれ……」
苦しげに目を背ける横顔に、サニーの非情な宣告が降り注いだ。
「トリコ。右足、赤」
「ちょっ!! 絶対届かねえって!!」
ぷるぷると小鹿のように震えるトリコの姿に、ボクとサニーは腹を抱えて笑った。
今日はゼブラの誕生日。ボク達3人は朝から無人のコロシアムでゼブラの能力測定と称した修行に延々と付き合わされた。久々にお互い一切手加減抜きでやり合って、16時を過ぎてやっと開放された時には全員力を使い果たしてオートファジー寸前だった。
軽く食べ物をつまんでからボクの家に移動し、4人だけの誕生日パーティーを始めた。勝負事が好きなゼブラのためにサニーが用意したのは、かつてボク達が研究所で暮らしていた頃によく遊んだゲーム類だった。倉庫の奥にしまい込まれていたというそれらはところどころに落書きがあったりして、懐かしくてくすぐったい気持ちになった。罰ゲームを各自1つずつ用意し、最下位になると罰ゲーム&リタイアとなる。最初はお子様のゲームなんてやってられるかと言っていたゼブラも、始めてみれば一番楽しんでいた。
第1回戦は人生ゲーム。面白いくらいに子供が増えていったトリコが1位。株が大当たりしたゼブラが2位。最初に多額の借金を背負ったけれど何とか返済しきってボクが3位。1回休みのコマに当たり続けたサニーが最下位だった。
「は!? 腹筋7万回、スクワット4万回!?」
「オレのやつだな。回数をごまかすなんてチョーシ乗ったことすんじゃねえぞ」
「んなつくしつねーことしねーし!」
そんなわけで、数えているボク達が早々に飽きてしまう中、きっちり腹筋7万回とスクワット4万回をこなしたサニーは終わったと同時にソファーに倒れこんでしばらく放心状態だった。
第2回戦はジェンガ。大雑把で繊細な作業が不得手な2人を相手に余裕で勝てると思ったのだが、トリコが口に放り込もうと投げ上げたピーナッツが鼻の穴にすっぽり嵌るというとんでもない光景に思わず吹き出してしまったボクは、手元が狂って盛大に崩してしまった。
「えっと、何々? 用意したものに着替え、日付が変わるまで脱ぐな?」
「何だ? メイドか? ナースか? ボンテージか?」
「ふぅん……そういう趣味だったのかお前」
「視線が突き刺さるぜココ」
サニーが取り出したのは虹色の全身タイツと鼻眼鏡。……ああ着るさ! 着てやるさ! ボクだって男だからな!
鏡に映った自分の姿に落ち込んだけれど、もっと落ち込んだのは「いつもと対して変わんねーじゃん。つまんね」というサニーの一言だった。
第3回戦はツイスターゲーム。トリコとゼブラの一騎打ちだ。ボクも見物していたかったけれど、そろそろ料理を作り始めないと食いしん坊達が騒ぎ出すので、仕方なく1人でキッチンに篭った。
本当はゼブラのお気に入りである小松君の料理で祝ってやりたかったが、「2月9日は肉の日」なんて御誂え向きの語呂合わせを見逃す経営者はこのグルメ時代にはいない。ホテルグルメもご多分に漏れず肉料理食べ放題イベントを開催するとあって、料理長の小松君が厨房を空けるなんてことが許されるはずもなく。仕方なくボクが代わりに料理を作ってやることになったのだ。
そして冒頭のくだりへと繋がる。もちろんボクはずっと、虹色全身タイツに鼻眼鏡である。
Fin.
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