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2024/05/19 09:29 |
【あの日、サンタが歌った歌は】1.Prelude
メリークリスマスイブ!
クリスマステキスト投下です!

今回はちょっとした仕掛けを施しておりますので、数字の順番にお読みください。
本文のリンクを辿ると楽だと思います。

気に入っていただけたら幸いです。







 豪華なシャンデリアの輝くホールに集う、着飾った紳士淑女達。その顔触れは政治家、富豪、女優、スポーツ選手、小説家など新聞やテレビの常連ばかり。誰もが他所行きにあつらえた笑顔を貼り付け、そこかしこで歯の浮くような社交辞令を惜しげもなく披露している。
 ステージでは会話の妨げにならない程度の音量で管弦楽団がクリスマスメドレーを奏でる。壁際に並んだテーブルにはありとあらゆる料理が並び、ビュッフェ形式で提供されている。カクテルやシャンパンもふんだんに用意されている。
 ここ数年恒例となっているIGO本部のクリスマスパーティーの光景だ。 

 会場の一角のテーブルを陣取り、マンサムはブランデーグラスを傾けていた。顔が赤いのも酒臭いのもいつも通り。いつもと違うことといえば、タキシードをきちんと着ていることだろう。形式ばった服装は苦手だが、さすがに公の場でタンクトップ1枚というわけにもいかない。ほんの3時間の辛抱だと自分に言い聞かせて見苦しくない程度にタイを緩めた。
 人波の中からグラスを片手にサニーが近付いてきた。美に関して徹底したこだわりを持つ彼は、今日も頭の天辺から足の爪先まで一分の隙もなくコーディネートしている。
「所長がタキシードなんて珍し。けど調和してねーからつくしくねーし」
 無遠慮にじろじろと見まわしたあげく、言いたいことだけ言うとサニーは去っていった。
 ビアロブスターとブラックペッパーのカナッペをつまんでいると、今度はココがやってきた。正装にターバンというミスマッチな組み合わせが妙に似合っている。
「お久しぶりですマンサム所長。今日くらい酒の量を控えようなんて気持ちはこれっぽっちもないようですね」
 さらりと微笑むココは、四天王一の優男の異名にふさわしく会場の女性達の視線を釘づけにしている。その彼の肩を、彼よりもさらにガタイのいい男が抱き寄せた。
「ココ! 次イカまぐろのカルパッチョ食おうぜ! あと純金クジラのピカタも!」
「一人で行けよ。ボクはお前と違ってそんなに食べられないんだ。それと暑苦しいから離れろ」
 冷たくあしらっているように見えて、ココの眼差しは先程よりも柔らかく優しさを増している。タイをきちんと締めたトリコは上機嫌に笑いながら食べたいものをあれやこれやと並べ立て、見かねたココのわざとらしい咳払いでやっとマンサムの存在に気付いた。
「よっ! 相変わらず酒臭えな! 茹でダコみたいになってるぜ!」
 片手で軽く挨拶をすると、そのまま嫌がるふりをするココを伴って魚料理のコーナーへと向かって行った。
 ウェイターに合図をしてグラスをブランデーから赤ワインに換える。ついでに蟹ブタのハムステーキを4皿頼むと、葉巻樹を取り出して火を点けた。胸一杯に吸い込んでゆったりと吐き出した煙の奥に一際大きな面影が2つ。
「ほう、これはこれは」
 ホール内にどよめきが起こった。そのほとんどは、第一級危険生物に認定されているゼブラがきっちりと正装して現れたことに対しての驚きや恐れである。そしてマンサムを含めた残り少数は、滅多にこういった場に顔を出さない茂松がやって来たことに対する驚きであった。
 ゼブラはマンサムを一瞥するとすぐに肉料理のコーナーに足を向けた。人波が一直線に分かれる様はさながらモーゼの十戒である。茂松はウェイターからジンを受け取り、マンサムの向かいの席に座った。
「珍しいですな、茂さん。今日はどういった風の吹き回しで?」
「何、ほんの気紛れよ」
 ふと、会場が薄暗くなり、ステージの照明が切り替わった。揃いの衣装に身を包んだ30人ほどの少年達がぞろぞろとステージ後方のひな壇に上がる。緊張した面持ちの聖歌隊は指揮者の合図で一斉にぺこりと頭を下げた。さざ波のような拍手が止み、オルガンが奏で始めた前奏のメロディは誰もがよく知っているクリスマスソングである。
「……あれはちょうど、ココ達が彼らぐらいの年の頃だったな」
 茂松が昔を思い出すような表情で呟いた。
「もうそんなに経ちますか。あのクリスマスから」
 マンサムは窓の外を見た。そういえば、あの夜もこんな空模様だった。
 聖歌隊は金文字でタイトルの記された楽譜を開き、透き通った歌声で歌い始めた。
 
さて、聖歌隊が持つ楽譜の表紙の色は、何色だと思いますか?
直感でお答えください。

< 赤 >

< 緑 >

拍手[3回]

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2011/12/24 22:00 | トリコ。

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