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2024/05/19 11:55 |
【HappyBirthday!】Evening
こんばんは。またしても滑り込みです。何とか間に合いました。
問題は22時の分です。現在白紙。赤信号点滅中ですがここまで来たら頑張ります。

ホテルグルメにてパーティー開催!全員集合しました。






「「「「「ハッピーバースデイ!」」」」」
 サニーの到着からやや遅れてパーティー会場に現れたココは、ドアを開けてすぐに5人からのクラッカーの洗礼を受けた。破裂音と紙テープに驚いた顔が照れくさそうな笑顔に変わる。リンがすかさず駆け寄り右腕に抱きついた。
「今日はうちがココの隣座るし!」
「ありがとう。今日のドレスも素敵だね」
 ココは穏やかな、しかし少し困ったような笑顔を向ける。やんわりと体を離そうとすると、兄のしかめっ面に気付いたリンはべーっと赤い舌を向けてよりしっかりしがみついた。左側からココの肩を抱いたトリコが鼻をひくひくと動かす。
「いい匂いするなココ。上質な紅茶の香りだ。喫茶店にでも寄ってきたのか?」
「ああ、ちょっとだけ」
「そんな所で立ち止まってないでさっさと座れ。お前が来るまで料理は出さねえって小僧が言いやがったからな。一応待っててやったぞ」
「当たり前じゃないですか! 本人がいないのに誕生日パーティーなんてできませんよ!」
 わいわいと騒がしい面々に苦笑いしつつココは席に着いた。
 
 最初に小松が一礼して簡単な挨拶を述べ、淡い色の花とリボンで飾られた円卓に料理が運ばれてきた。ココ、サニー、リンの前には一般的な1人前の量、トリコとゼブラの前には5人前が並べられる。繊細な盛り付けと素材の持ち味を生かした品々に、全員が感嘆の溜息を漏らした。
「スマイルアンコウとミルクホタテのテリーヌか。前菜からパネェつくしいな」
「白毛シンデレラ牛のローストビーフも旨味がぎゅっと詰まってて最高だしー」
「小僧、このゴールドにんじんのポタージュもっと持ってこい。パンも追加だ」
「オレには白ワインを頼むぜ!」
 口々に賞賛を述べながら料理を味わう彼らをココは幸せそうな笑顔で見ていた。一人で食事をすることにはとっくに慣れていたが、やはり気の置けない仲間達と一緒に食事をするのはいいものだ。手元のポタージュをしっかりと味わって食べ終わると、次に出されたのはガララワニのステーキと白毛シンデレラ牛のビーフシチューのパイ包みココット、そしてネオトマトと最高速チーズのサラダだった。トリコとゼブラの前には大皿でシチューが出された。
「へえ、肉料理が先とは珍しいな」
 待ちかねた肉料理の登場に大食漢二人のスピードは加速し、サニーとココは思いきり眉を顰めた。
 ココが一切れ口に運ぶ間にトリコの前の皿が2つ空になる。リンが最高速チーズを手に入れた話を聞かせる間にゼブラの前の皿が7つ空になる。2人の周りではウェイターが必死の形相で入れ替わり立ち替わりに料理を運び、そこだけがまるで戦場だ。結局ガララワニの肉が底を尽くまでトリコとゼブラの手は止まらなかった。
 積み上がった大量の皿がすっかり片付けられ、久々にテーブルクロスの柄が現れる。そこに運ばれてきたのは、白・黒・赤のコントラストが目にも鮮やかな皿だった。
「ルビークラブのソテー、漆黒米リゾット添えでございます」
 ロブスターと見紛うばかりの立派な身が皿の手前に鎮座し、湯気とともに濃厚な香りを放っている。皿の奥には艶やかな漆黒米のリゾットが深紅に輝くルビークラブの殻にこんもりと盛り付けられていた。
「おお! つくしさMAX!」
「これってトリコが獲ってきたんでしょ? 超おいしそうだし!」
 兄妹揃ってうっとりと目を輝かせて料理を観賞している間に、ゼブラはさっさとたいらげておかわりを要求していた。ココもさっそくナイフを入れようとしたところをトリコに止められる。
「ココの皿はまだ完成してねえんだよ」
 トリコが合図すると、小松がココの脇に立った。全員が注目する中、小振りのソースパンからオレンジ色のソースがルビークラブの身にかけられた。よく見るとソース自体は琥珀色で、細かなオレンジ色の粒が浮かんでいる。ココは驚きに目を見開き、食い入るようにソースを見つめる。
「これって、まさか……」
「そのまさかです。ルビークラブの外子ですよ」
 小松とトリコ以外の全員の目が点になる。それもそのはず、ルビークラブの産卵時期は初夏のわずか6日程度。傷みが早いために保存もきかず冷凍もできない、本来ならこんな時季外れの10月に手に入れることは到底不可能な代物なのだ。
「オレがこないだ依頼を受けてハントに行った島がちと特殊な気候の所でさ。周囲を流れる暖流の影響で季節がずれてて今がちょうど梅雨なんだよ。で、そこに生息しているルビークラブも産卵シーズン真っ只中ってわけだ。それでも子持ちのやつは1匹しかいなかったが、その1匹を見つけられたのは小松の包丁を持ってったおかげだぜ」
「パネェ……松の食運マジパネェ……」
 トリコは凍りついたように動かないココに声を掛けた。
「オレからの誕生日プレゼントだココ。これのためにコースの順番だって変えたんだぜ。ほら、いつまでも眺めてると冷めちまうぞ」
 満面の笑みのトリコにリンは見とれているが、ココの目には全身から立ち上る妖しい電磁波が嫌というほどはっきりと見えている。笑い泣きのような複雑な表情のままナイフを入れると、そっと口に運んだ。ルビークラブの身の濃厚な甘みにソースの塩気が程良く絡み、噛み締めればぷちぷちと卵が弾ける。ゆっくりと喉を通る感触を楽しみながら飲み込み、ココの顔が綻んだ。
「おいしい……おいしいよ小松君!」
「え?」
「喜んでいただけてよかったです!!」
 自分に向けられると思っていた笑顔が小松に向けられて拍子抜けするトリコ。ココは笑顔で言葉を続けた。
「そうだ、せっかくだからみんなにも味わってほしいな。こんなにおいしいもの、一人占めなんてできないよ」
「さすがココさん! 優しいなぁ!」
「いや、オレはお前だけのためにだな……」
「やったあ! ココありがとー!」
「早くソース持ってこい小僧!」
 小松はいそいそとソースパンを持って各自の席を回る。がっくりと肩を落とすトリコの前の皿にもソースがかけられた。切り分けずに丸ごと一口で口に入れる。うん、確かにうまい。でもオレはあくまでもココのために獲ってきたんだけどな。恨めしく隣を見ると、ココは目を細めて周りを見渡していた。視線の先にはルビークラブに舌鼓を打つリン達の笑顔と、嬉しそうに皿を運ぶ小松の笑顔。
「もうさすがに誕生日を手放しで喜べるような歳じゃないが、こんなに楽しいパーティーを開いてもらえるんだったら、歳をとるのも悪くないって思えるよ」
 その顔があまりにも幸せそうで、トリコのふてくされた気分はどこかへ行ってしまった。
「なあココ」
「ん?」
「来年もやろうぜ誕生日パーティー。来年だけじゃねえ、これから毎年。それぞれ都合があるから全員は集まれねえかもしれねえけど、オレ1人でも絶対パーティー開いてやるよ」
「はは、期待してるよ」
「おう! 任せとけ!」
 2人は笑顔で顔を見合わせた




※外子→メスの蟹がお腹に抱えている卵のこと。卵巣は内子という。

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2011/10/29 18:57 | トリコ。

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