滑り込み10時!ぎりぎり間に合った!
本当に完走できるのかだいぶ怪しくなってきましたが頑張ります。
ゼブラと小松がしゃべってます。ココ本人は出てきませんが名前はたくさん出てきます。
本当に完走できるのかだいぶ怪しくなってきましたが頑張ります。
ゼブラと小松がしゃべってます。ココ本人は出てきませんが名前はたくさん出てきます。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよぉゼブラさぁん!」
「さっさとしろ小僧」
巨大な白毛シンデレラ牛3頭とガララワニ5匹を引きずるゼブラの後を、大きなリュックサックを背負った小松が必死に追いかけている。
巨人と小人にも等しい体格差がある彼らが同じ年齢だと、一体世の中の何人の人間が信じるだろうか。多少はゼブラも気を遣って速度を落として歩いているのだが、一歩の幅が3倍以上もあっては小走りにならないととても追いつけない。小松は日頃トリコがいかに自分のペースに合わせて歩いてくれているかを痛感した。
今夜のパーティーはトリコだけでなくゼブラも出席するとあって、小松は1ヶ月以上前から晩餐会並みの量の食材を手配していた。ところが、2日前になってメインディッシュを含む一部の食材が間に合わないという連絡が入り、急遽トリコ達に調達を依頼した。
『オレは無理。ダサポイズンのコーディネートでパネェ忙しいし』
『ルビークラブならこないだ穴場の岩場を見つけたから、獲ってくるぜ』
『ガララワニのついでに白毛シンデレラ牛も取りに行ってやる。ただし、小僧が同行することが条件だ』
そんなわけで、現在ハントを終えた2人はホテルグルメを目指して歩いていた。
「ゼブラさん! 休憩! 休憩しましょう! 僕もう歩けないです!」
「ああ? 情けねえなあ。お前それでも男かよ」
「しょうがないじゃないですか! 僕は皆さんみたいに鍛えてないんですから!」
小松が音を上げるのも無理はない。昨日ガララワニを獲りに行った時はトムが船を出してくれたものの、公共の交通機関以外は軒並みゼブラの顔を見ただけで速度を上げて走り去ってしまうせいで徒歩移動を余儀なくされた。早朝にIGOの契約牧場で白毛シンデレラ牛を引き取ってから実に4時間休憩なしで歩き続けた小松の体力は限界だった。
とうとう足が縺れて力なくへたり込んでしまったので、舌打ちしつつゼブラも道端に腰を下ろした。汗だくの小松が両手で水筒を抱えて一生懸命に水を飲む横で、縫い閉じられた頬を不自由そうに動かしながら干し肉を齧り始める。
「お前よくそんなんでトリコのハントについて行けてるな。そのうち足手纏いになって死ぬぞ」
「うっ、すいません……」
「謝るぐらいなら鍛えろ。チョーシ乗ってんじゃねえ」
しょんぼりと項垂れて肉柄のタオルで汗を拭っている。ゼブラはくちゃくちゃと干し肉を噛みながら後方の獲物に目をやった。生気のない大きな塊は、死してなお生きていた頃の威圧感を損なわずに存在している。
「こいつらはどう調理するんだ? ステーキか?」
「ガララワニはそのつもりです。ココさんはあっさりした味付けが好みですから、シンプルに塩コショウだけで。白毛シンデレラ牛はローストビーフとシチューにしようと思ってます。ココさん気に入ってくれるといいんですけど」
ポケットからメモを取り出すとゼブラの前に差し出した。そこには今日のコースのメニューと必要な食材が書かれていた。仕入れ済みの食材には赤丸が付けられている。
「ココさんっていつも冷静で穏やかで優しくて、さらに強くてかっこよくて、いざって時にはとっても頼れるんですよね。でも常に悲しみを抱えてるような儚さやちょっとおちゃめなところもあって、思わず守ってあげたくなるギャップがたまらないんです。まあ現実としては僕が守られてるんですけど。……ああ、やっぱり僕はココさんのこと好きなんだなあ」
「うるせえ。オレはノーマルだからホモの片思い話なんざ聞きたくねえんだよ」
昨日から何度も同じ言葉を聞かされうんざりした。ココの話をする小松の顔はにこにこと朗らかで心拍も呼吸も嘘は吐いていない。ここまで臆面もなくココを好きだと言ってのける男は2人目だ。この世には女など掃いて捨てるほどいるのになぜわざわざ男を選ぶのかゼブラには理解不能だった。
小松が懲りずにココについて語り出そうとした時、前菜から順に目で追っていたゼブラの片眉がぴくりと上がる。
「おい、サラダのところに書いてある『チーズチーターの最高速チーズ』に印が付いてねえぞ」
「え…………ええ!? 本当だ! すっかり忘れてた! にぎゃーどうしようーー!! 今から引き返したんじゃ間に合わない!!! せっかくココさんのために練りに練ったメニューだったのに!!!!」
メモを覗き込んだ顔がみるみる青ざめる。すっかりパニックになり慌てふためく小松の姿をじっと見ていたゼブラは、億劫そうに立ち上がると大きく息を吸い込み、西の空に向かって声を発した。
「小僧から伝言だ。『チーズチーターの最高速チーズ』追加で獲ってこい。……ネオトマトのサラダに要るんだとよ。……あ? 知るか。間に合わなかったら承知しねえぞ。じゃあ後でな」
手に持った干し肉を口に放り込むと、獲物を縛る紐を握り直してゼブラは歩き始めた。小松も急いで立ち上がり後を追う。
「ゼブラさん、今のってもしかしてトリコさんと話してたんですか?」
「おう。何とかするってよ、最高速チーズ」
「あ、ありがとうございます!!」
先程まで極度の疲労でべったりと座り込んでいたとは思えない程の軽やかな足取りで小松は歩き出す。またココさんココさんと言い出してゼブラに怒鳴られたのは、このわずか7分後のことだった。
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