忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/19 11:35 |
【HappyBirthday!】Early Morning
おはようございます。
さっそく遅刻です。
毎時きっかりに投下するのは無理そうなのでもくじを微修正しました。ダメ人間。

ココさん起床しました。






 小鳥のさえずりで目を覚ます。差し込む光は柔らかく、日の出からそう時間が経っていないことを告げていた。こめかみを抑え眉間に皺を寄せたココは霞む目で天井を睨み付ける。
「もう朝か……」
 腹筋に力を入れて上半身を起こすも、低血圧特有の鈍い頭痛に襲われ低く呻いた。早朝の空気はしんと冷えていて、一糸纏わぬ彼の体からどんどん体温を奪い取る。こんな日はもう一度ベッドに潜り込んで体が覚醒するまでじっとしていたいところだが、今日はそんな悠長なことは言っていられない。ココは隣で彼と同様に裸で眠りこけている青い髪の頬をぺちぺちと叩いた。
「トリコ、起きろ。おい」
「……ん~……これはこれで意外とうまい……」
 食べ物の夢でも見ているのだろう。ふにゃりと幸せそうな笑顔を浮かべて涎を垂らしている。もう一度頬を叩いて起きないことを確認したココは、がばりと毛布を剥ぎ取った。
「うおっっ! 寒っっ! 何すんだよココ!」
「おはようトリコ。寒いならさっさと起きて服を着ろ。これからディナー用のルビークラブを獲りに行くんだろう?」
 ベッドから降りると、急に冷気にさらされて縮こまるトリコに服を投げてよこす。クローゼットから仕事着を取り出して着替えると、渋々皺だらけの服を着たトリコはまだベッドの上で胡坐をかいていた。まだ目が覚めきっていないようで、あくびをしながらぼりぼり頭を掻いている。
「ぐずぐずずるな。もうすぐうちに人が来るんだ」
「サニーだろー? 別にいいじゃねえかよー」
「よくない……っておい!」
 畳んだ毛布に突っ伏すトリコ。慌てたココがその背中を何度も揺さぶるが、二度寝の誘惑に負けた彼はがっしりと両腕で毛布を抱き込んで離さない。その間にも時計の針はどんどん進んでゆく。しばらく思案したココは、大きく溜息を吐くと3本の傷が刻まれた耳に唇を近づけた。
「なあ、難しいとは思うんだが、もし、もしも貴重な子持ちのルビークラブを獲ってきてくれたら、今夜は……」
 最後の言葉だけわざと息を吹きかけるように囁いて、軽く音を立ててキスをする。途端にトリコが跳ね起きた。
「本当か!? 本当にいいのかココ!?」
「ああ」
 ココが目線を逸らして顔をわずかに赤らめつつ小さく頷くと、ギラギラと目を輝かせたトリコは鼻息荒くベッドから飛び降りた。
「必ず子持ちのやつ獲ってくるからな! 首を洗って待ってろよ!」
 雄叫びを上げながら嵐のごとく家を飛び出していったトリコにひらひらと手を振ったココは、その背中が完全に見えなくなると口角をニヤリと吊り上げた。
「今年の産卵シーズンはとっくに終わってるけどね」
 
 トリコが去ってから30分後、サニーが現れた。崖の向こうには彼の乗ってきた黒いセスナが待機している。
「支度できてんな。行くぞ」
 キッスに乗って対岸に渡ると、不安げにガァガァと鳴くその嘴を優しく撫でて口付けた。
「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう」
 身を屈めて乗り込むと、セスナはゆっくりと発進した。キッスの姿がどんどん小さくなるのをじっと見つめていたココに、サニーがエアアクアのペットボトルを差し出す。
「今のうちに飲んどけ。いつも終わった後貧血でぶっ倒れんだし」
「ん、ありがとう」
 蓋を開けて一気に飲み干すと、脇の座席に置かれた分厚い書類を手に取った。2本目のエアアクアを飲みながらじっくりと読み進めるにつれて、ココの表情が硬く感情のないものに変質していく。
「まずいな。今年は外傷が残るものばかりだ。腕や太腿はともかく顔は隠しようがない」
「いちおネオトマト積んできたから、ある程度は消せるだろ。終了時刻は?」
「15時とは書いてあるが、1時間はオーバーすると見て間違いない。まあ、着替えや休憩を含めても余裕で間に合うだろうな」
 キューティクルベリーをつまみながらココの持つ書類を覗き込んだサニーはすぐに顔を背けた。
「……毎年恒例とはいえ、正気の沙汰じゃねーな」
「ボクもそう思うよ」
 それきり会話は途絶えた





拍手[5回]

PR

2011/10/29 06:28 | トリコ。

<<【HappyBirthday!】Daytime | HOME | 【HappyBirthday!】前夜>>
忍者ブログ[PR]