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2024/05/19 10:23 |
【着用時は他の衣類からの色移りにご注意ください。】6
カ、カウンターが回ってる!拍手がゼロじゃなくなってる!
わわわわわ、あ、ありがとうございます!
検索サイト様効果出るの早すぎ!!

びびりまくりの中最終話投下します。
心臓縮んだ気がするけど(゚з゚)キニシナイ!!






 目が覚めたのは明け方近く。まだ空はうっすらと白み始めたばかりだ。眠っている間露出していた肩は冷たく、少しだけ毛布を引き上げて覆った。
 ほんの少し体を動かしただけでも全身に鈍い痛みが走る。特に腰はひどい。20代も後半になれば嫌でも体力の衰えを実感せざるを得なかった。昔は夜通しどうにかされても翌朝には何事もなかったようにハントに出掛けることができたのに。いや、占いばかりで単に体がなまっているのかもしれない。本格的に鍛えなおすか。
 目線を横に向けると、トリコのだらしない寝顔が間近にある。弛緩しきった表情は無防備そのもの。薄く開いた唇の間からは涎が垂れている。寝顔にまで品性を求めようとは思わないが、『グルメ時代のカリスマ』がここまで緩んだ顔を晒してもいいものだろうか。ハントの時の精悍な顔立ちとあまりにもかけ離れた幼い顔に思わず忍び笑いが漏れた。と、トリコの瞼が細く開く。
「……おー、朝かー? まだ暗いじゃねえか」
「ごめん、起こしたな。まだ寝てていいよトリコ」
「んうー」
 ぐいと体を抱き寄せられ、額から瞼、頬にキスが落とされた。首筋にぐりぐりと鼻先をすり寄せてくるその仕種はまるで犬だ。ひとしきり匂いを嗅ぐと、トリコは嬉しそうにボクの顔を覗き込んできた。
「よーし、バッチリだ」
「何が?」
「んー、オレの匂いのマーキング……あだっ! 何で殴るんだよ!」
「馬鹿かお前は!! 何がマーキングだ!!」
 それこそ犬じゃないか! 一晩中全身筋肉痛になるまで抱いた理由がそれか!
 頭に来るやら恥ずかしいやらで顔が紅潮していく。腹立ち紛れにもう一発殴ってやろうとした腕ごとまとめて抱きしめられ、分厚い胸板に顔を押し付ける格好になった。脚もしっかりと絡められて動けない。なおも抵抗を試みていると、溜息とともにふてくされた声が頭上から降ってきた。
「昨日の服、めちゃくちゃ似合ってた。でもな、全身からサニーの匂いさせてんじゃねえよ。何もねえのはわかってるが勘ぐっちまうだろ。しかも小松にはべったり手ぇ握らせてるしよ。お前はオレのもんなんだから、オレの匂いだけさせてりゃいいんだよ」
「……子供か」
「どうせガキだよオレは」
 大きな手で頭をぐりぐりと撫で回された。図体はボクより一回り以上も大きいくせに、こういう時ばかりは年下だということを妙に意識させられる。
 わずかに体を包み込む腕が緩んだ。顔を上げると、ボクの顔を覗き込む焦げ茶色の目がすっと細められた。低く自分の名前を呼ぶ唇が次の言葉を紡ぐ前に目を閉じる。一際優しい声が柔らかい吐息と共に頬に触れ、いよいよ唇同士も触れ合おうとしたその時……。
「はよー」
「うおわあああああ!!????」
 平然と寝室のドアを開けて入ってきた突然の乱入者に、慌ててトリコの顔を押しのけ頭から毛布を被った。誰かなんて顔を見なくてもわかる。
「何だよサニー、いいとこだったのに!」
「朝っぱらから盛ってんじゃねーよガチホモカップル」
 この場に乗りこんできてそれを言うか。トリコ、お前も普通に対応するな。それから怒るところはそこじゃない。
「お、お前、勝手に鍵開けて入って来るなっていつも言ってるだろう!」
「や、今日は開いてたし」
 ……そうか、昨夜トリコが閉めなかったのか。いや、開いていたからといって勝手に入って来るな。
「……な、何の用だ」
「昨日のパーティーでさ、リンにモーニングローズのフレグランスくれたじゃん?あれパネェ喜んでたから、礼に所長のとこから牛豚鳥2頭かっぱらってきた」
「牛豚鳥!すげえな!あーそれ聞いたら何か急に腹減ってきた!早く食おうぜ!」
「トリコに持って来たんじゃねーし!」
 トリコのスイッチが食欲に切り替わった。色気より食い気とはまさにこのことだ。ベッドから飛び出し玄関に走って行く足音を追いかけるように「おまっ、パンツ穿け!つくしくねー!」という絶叫が響いた。毛布の中で頭を抱えるボクに、サニーの言葉はさらに追い打ちを掛ける。
「てか今さら恥じらうもんでもねーだろ。こんなん何度も出くわしてっし。お前寝てたけど」
「んなっ……!?」
 トリコがやけに落ち着いていたのはそのせいか! というか、『何度も』ってどういうことだ!
 もう嫌だ。最悪だ。恥ずかしすぎて毛布の外に出られない。このまま消えてしまいたい。そんなボクの煩悶など全く意に介さず、サニーの態度は実に淡々としたものだ。
「で、あいつ何が気に入らなかったって?」
「……お前や小松君に妬いてたらしい」
「んだソレ。アホくさ」
 遠くでトリコがナイフを繰り出す音が聞こえる。さっそく解体に取り掛かっているのだろう。全裸で。
「サニー、とりあえずトリコを室内に入れてくれないか。あのままじゃ通報される」
「だな。ココも早く服着ろ。んで朝飯にしよーぜ」
 ドアが閉まる音を確かめてのろのろと毛布から這い出す。軋む体に鞭打ってクローゼットを開き、手近にあったキャメルのハイネックカットソーとチャコールグレーのスラックスに着替えた。ぐちゃぐちゃのシーツを剥ぎ取り、昨夜脱ぎ散らかした衣類を集めて、トリコの服はベッドの上へ。シーツと自分の服は洗濯機へ。
 とにかくいつも通りに振る舞おう。まだトリコに説教もしていない。腹を括って大きく深呼吸し、牛豚鳥の調理法を考え始めたところでドアが開いた。ボクを見るなり、ピンクのパーカーにジーンズ姿のサニーは嫌そうな顔、全裸で肉塊を抱えたトリコは屈託のない笑顔で、異口同音に同じ言葉を放った。
「「おお、いつものココだな」」
 
 ……何だか複雑な気分なのはなぜだろう。



Fin.

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2011/10/21 22:26 | トリコ。

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