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2024/05/19 11:35 |
【着用時は他の衣類からの色移りにご注意ください。】4
トリココにはまり、なんと約10年ぶりにBL復帰。というか、二次創作自体約10年ぶりです。
先日テンション上がって当時の友人にメールしたら「おかえり!」と超歓迎されました。

11月のトリコオンリーももちろん行きますよ!冬コミも行きますよ!
もう若くないけど(゚з゚)キニシナイ!!






 ……さすがにこの反応は予想していなかった。
 
 パーティーは宴もたけなわ。小松君の料理はどれもとてもおいしかった。主役のリンちゃんの前にはずらりとケーキが並べられ、トリコの横に座って幸せそうに頬張っていた。大いに酔っぱらったマンサム所長とトムは肩を組んで歌を歌っていた。トリコも笑顔で料理をどんどん口に運んでいた。ボクは小松君に両手を握られ熱く料理について語るのを聞いていたが、彼が飲み物を取りに席を立ったのに合わせてトイレに向かった。背後で、カウンターでゆっくりグラスを傾けていたサニーが席を立つ気配がした。
 
「んだよトリコのあの顔!」
 手洗い場横の壁にもたれて、サニーが不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「好みじゃなかったんじゃないか? 残念ながら」
「『KUGIPANCHI』なんつーありえんロゴが入ったTシャツをあそこまで着こなすようなやつの好みなんぞ知らん!」
 それ、褒めてるのか貶してるのかわからないぞ。
 リンちゃんにプレゼントを渡した後、ボク達はメインテーブルに向かった。みんなボクの服装に驚いたようで、恥ずかしくなるくらい褒めちぎってくれた。特に所長は大喜びで、「お前もやればできるじゃないか! こりゃあさっそく会長に見せないとな!」とか言いながら携帯のカメラで何度も写真を撮られた。
 ただ一人、トリコの反応だけは違った。口いっぱいに食べ物を詰め込んで振り返ったトリコは、ボクを見て一瞬動きを止めると眉間に皺を寄せた。そしてすぐに背を向けると「お前ら遅かったから先に食ってるぞ!」とだけ言うと食事を再開したのだ。
 幸いにもその表情を見たのはボクとサニーだけだったから、パーティーの雰囲気が盛り下がることはなかった。しかし、それから今に至るまでトリコとは一言も会話していない。
「あーあ、ココのこの格好見てトリコが一番大騒ぎすると思ったのによ」
「はは、当てが外れたな」
 確かに、サニーから渡されたこの服に袖を通した時に、トリコの感想が気になったことは否定しない。けれど、正直この手のものは着たことがなかったから似合うかどうかは自分でも自信がなかったし、好評でない可能性もあると覚悟はしていた。だから別段落ち込んだりしてはいないのだが。
「ちなみに電磁波は? 見たんだろ?」
「……良くはなかった、とだけ言っておくよ」
 ブブブ、と振動音が響く。発生源はボクの携帯だった。新着メールの送信者はトリコ。件名、本文なし。何だこれ。
「ココさん! サニーさん! ここにいたんですか!」
「どうしたんだい? 小松君」
 突然大きな音を立てて小松君が入ってきた。何だかひどく困っているようだ。
「それが、マンサム所長とトムさんとリンさんが眠っちゃって、僕らだけじゃとても運べなくて。すみませんがお願いできませんか?」
「ったくハメ外しすぎだろあいつら! てかトリコはどうしたんだよ。あいつ一人でおっさん二人なんざすぐ片付くだろ」
「それが、用事があるとかで先に帰っちゃって……」
「帰ったぁ!?」
 席に戻ってみると、テーブルには大量の空の酒瓶に囲まれて食べかけのサバランがひとつ。所長とトムは肩を組んだまま大きないびきをかいており、リンちゃんはソファー席に幸せそうな顔で横になっていた。
 野郎2人はガタイが良すぎて普通の人にはとても動かせないし、リンちゃんのスカートはかなり際どい捲れ方だ。脇ではスタッフが音を立てないよう用心しながら大量に積み上げられた皿をせっせと運んでいる。あいつ、この状況を放置して帰ったのか。
 とりあえず所長とトムをそれぞれタクシーに放り込んで店内に戻ると、小松君達は途方もない量の皿を洗っていた。これから4人だけで全ての皿を洗うのでは終電がなくなってしまうからと手伝いを買って出たが、丁重に断られた。
「ココさんはゲストですから、手伝っていただくわけにはいきません。今夜はここに泊まる許可もいただいてますし、僕らは明日は休みを取ってますから大丈夫です」
 笑顔でそう言い切られてしまっては、無理に手を出すのも野暮というものだ。彼らに心からの労いと感謝を述べ、ボクは店を出た。
 表の通りでは、リンちゃんを抱きかかえたサニーがタクシーを待っていた。
「ったくこの土管娘、また重くなってっし」
 文句を言いつつも、柔らかく優しい電磁波がリンちゃんを包むように発せられている。
 サニーは昔からリンちゃんをとても大事にしていた。大怪我を負ったリンちゃんがリーガルマンモスの体内から出てきた時、体を内側から食い破らんとするほどの激しい怒りを周りに気取られないように押し殺していたことをボクは知っている。
「リンちゃんが元気になって本当によかったな」
「コイツはそれくらいしか取り柄ねーし」
 相変わらず素直じゃないやつだ。到着したタクシーにリンちゃんを起こさないようにそっと奥に座らせてからサニーが乗り込む。
「じゃあ、おやすみサニー」
 遠ざかっていくタクシーを見送って、ボクは繁華街を抜けた空き地で指笛を吹いた。



Fin.

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2011/10/19 20:38 | トリコ。

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