昨日アップしなかった分、まとめて２本投下。
俺、これが完結したら、サーチエンジンに登録申請するんだ……（死亡フラグ）
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ピアスを付け替えたのは久々だ。元々おしゃれで付けているものではないから、女性のようにその日の気分や服装に合わせて変えるという発想もなかった。
シルバーのピアスは、形はシンプルだが手の込んだ細工のチェーンとスカイブルーの石がポイントになっている。とある誰かの髪色に似ているような、そうでないような。
「ビューティー。つくしい。やっぱ腹立つ」
「お前が選んだんじゃないか。首回りがスースーして何だか落ち着かないよ」
サニーが用意してくれたのは、黒い中折れ帽と柔らかい薄手のストール、白の七分袖カットソー、ダークグレーのダメージジーンズ、黒い革靴だった。
サニーが着替えたのは、グレーのストライプの開襟シャツに黒いベスト、ワインレッドの細身のパンツ、黒いショートブーツ。髪は高い位置で一括りにしている。ファッション雑誌のモデルのようだ。
「っかし、いつにも増してすごかったな……」
「そうだね……」
キッスに乗ってグルメフォーチュンに来たボク達は、リンちゃんへのプレゼントを受け取って店を出た途端に怒涛の如く押し寄せてきた大勢の女性にもみくちゃにされ、やっと抜け出したと思ったら今度は老人会の人達に捕まって「頼むから街に来る時はいつもの服で来てほしい」と懇願され、這う這うの体でキッスの所に戻った時にはもう開始時刻10分前だった。キッスには頑張ってもらったけれど、結局遅刻してしまった。
「いつもボクが私服の時は誰も寄ってこないんだが、やっぱりサニーは目立つんだな。今度からは仕事着か目立たない服装で来た方がいいぞ」
「……オレのせいだと思ってんの？」
「違うのか？」
「……いや、分かんねーならいい。ほれ、見えたし」
サニーが指差す先に看板が見えた。その下には地下へと続く階段が伸びている。ここの地下2階が本日のパーティー会場だ。サニーに続いて下りていくと、開かれた木製のドアの向こうは楽しそうな話し声と料理のいい匂いで満ち溢れていた。
ささやかなパーティーというだけあって、招かれたのはボク達以外にマンサム所長とトムだけのようだ。奥のテーブルをトリコと3人で囲んで飲み食いしている。すでに空になった皿や酒瓶が脇のテーブルに積み上げられていた。
しかしメンバーがメンバーなだけに、全てのテーブルに所狭しと並べられた料理の量はどう少なく見積もっても50人前を優に超えている。厨房の奥からは小松君が指示を出す声が聞こえ、3人のスタッフがフロアと厨房とを忙しなく往復していた。
「ココ！」
カラフルなマカロンタワーをうっとりと眺めていたリンちゃんが、赤と黒のチェックのワンピースを翻しながら駆け寄ってきた。
「んな短いワンピで走んな！ てか土管足丸出しじゃねーか！ タイツ穿けっつったろ！」
「ウチは生足のがいいと思ったの！ お兄ちゃんマジウザイんだけどー」
生死の境を彷徨うほどの大怪我を負ったとは思えないはつらつとした笑顔も、サニーとの相変わらずのやり取りも、彼女がすっかり元気になった証拠だ。ボクもつられて笑顔になる。
「遅刻しちゃってごめんね」
「まだ始まったばっかだから大丈夫！ てかその服超似合ってるし！ お兄ちゃんよりかっこいーし！」
「ありがとう。リンちゃんもよく似合ってるよ。あ、ちょっと手を出してくれる？」
ポケットからプレゼントを取り出す。必死で庇ったお陰で小さなピンク色の包みは潰れることなく形を保っていた。リンちゃんの掌の上で白いリボンをほどいて包みを開ける。中央に鎮座したバラの蕾を模した香水瓶を見た彼女の顔が喜びに輝いた。
「モーニングローズのフレグランスじゃん！ しかもAAAランクの超たっかいやつ！」
「この香りなら食事の時にも邪魔にならないからいつでも使えると思ってね。退院おめでとう、リンちゃん」
「ありがとうココ！」
リンちゃんはさっそく一滴つけると、店の奥のテーブルでこちらに背を向けて座っているトリコに向かって駆けて行く。文字通り、頬をバラ色に染めて。
一連の流れを黙って見ていたサニーは彼女の背中を目で追いながらぼそりと呟いた。
「……こーゆーの、何つったっけ？ ああ、敵に砂糖を贈るか」
「リンちゃんを敵だなんて思ってないよ。それと、砂糖じゃなくて塩」
「ワザとだっつの。この毒めが」
Fin.
[7回]
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