どうしても気に入らなくて散々悩んだ挙句、タイトル変更。
長いけど(゚з゚)キニシナイ!!
長いけど(゚з゚)キニシナイ!!
ブランチはあり合わせの食材で簡単に済ませた。塩味のフレンチトーストにベーコンとチーズ、ネオトマトとバナナキュウリのサラダ、昨日の残りのミネストローネ、ホワイトアップル。味付けにうるさい四天王一の偏食男が文句も言わずに食べたのだから、出来はよかったようだ。
サニーは食後の紅茶を勝手に淹れて飲んでいる。持参したファッション雑誌を捲りながら優雅なものだ。対して寝室は服の小山が乱立したまま。自分で散らかしたんだから、せめて片付けの手伝いくらいしたらどうだ。……どうせ言っても知らん顔されるのがオチか。
仕方なく引っ張り出された服をしまっていると、リビングから声がした。
「ところでココ、今夜何があるかわかってんだろうな?」
「ああ、リンちゃんの快気祝いだろう?」
リーガルマンモスの体内で、リンちゃんはひどい傷を負った。GTロボの腕が腹部を貫通するという致命傷を負ってなお生還できたのは本当に奇跡としか言いようがない。彼女のグルメ細胞を劇的に活性化させた食材については、あえて言及しないけれども。
あれから1ヶ月、やっと退院することのできた彼女のために、小松君とトリコがささやかなパーティーを企画した。元気になったリンちゃんに会えることももちろんだが、久々に小松君の料理が食べられるとあって、招待状を受け取ったその日からとても楽しみにしていた。
「そろそろ出かける支度をするよ。途中でグルメフォーチュンに寄って、取り寄せたプレゼントも受け取らなきゃいけない」
招待状をもらったその日にクリーニングに出した黒スーツとドレスシャツをハンガーから外そうとした時、サニーの冷たい声が突き刺さった。
「会場、ホテルグルメじゃねーぞ」
……え?
「だ、だって小松君が『皆さんのために腕を振るいます』って……」
「っぱしちゃんと読んでねーのな! 地図付きで書いてあんだろーが!」
目の前に突き出されたのは小松君手書きの招待状。自分宛てにIGO関係者以外から手紙が届くなんて久しぶりのことだったから、とても嬉しかったのを覚えている。
既に一度読んだ文章を辿った最後に記された店名は…………見覚えがない。初めて目にする名前だ。てっきりホテルグルメだと思い込んでいたから、地図が載っていることは認識していたが見ていなかった。
サニーによると、新規オープンしたIGO直営のショットバーだという。四天王が来店したとなれば箔がつくということで一日貸し切らせてくれたらしい。場所はグルメタウンの東の外れの辺りだった。
ざっくり斜め読みして細かいところがおざなりなのは昔からのボクの悪い癖だ。サニーが来なければ、誰もいないホテルグルメの宴会場で途方に暮れたことだろう。
ありがとうサニー。でもせめて今ぐらいの時間に来てくれればもっと嬉しかった。
「ショットバーとなると、シャツはもう少しラフな方がいいか」
「そだな。だがその手に持ってるベージュと紫のストライプはありえねーからやめろ。つかお前の私服は全部却下」
触覚で乱暴にクローゼットを閉められ、手を挟みそうになる。危ないじゃないかと言いかけたボクに、持ってきた紙袋をひとつ手繰り寄せて押しつけた。
「それやるから着ろ。どうせんなこったろーと思ったから、適当に見繕ってきたし」
「あ、ありがとう」
中を見ると、服一式と帽子と靴、ピアスが入っている。どれもサニー御用達の一流ブランドのものだ。
「っつに、たまたま昨日リンの買い物に付き合ったから、そのついでにショップ寄っただけだし。つかアイツ、パネェ量の服買うわケーキバイキング梯子するわで一日中連れ回しやがってマジ疲れたし」
疲れた、なんて言ってるわりには随分嬉しそうに話すじゃないか。リンちゃんの話をする時のサニーはいつだって穏やかな目をしている。きっと本人は気付いていないんだろうけど。
「相変わらずリンちゃんには甘いな、お兄ちゃん?」
「キショッ!! 歳考えろよお前!」
うわ、容赦ない。
Fin.
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