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2024/05/19 10:09 |
【17 years before】サニーとゼブラ
先日自分でカウンター100を踏んで非常にがっかりしました。
現在どこにもリンクしてないし検索サイトにも登録していないので、本当に自分だけでカウンター回しているんだなあと。
この話が一段落ついたら検索サイトに登録してみようか。


庭時代捏造(6)です。






 ガツガツ。
 むしゃむしゃむしゃむしゃ。
「おーいトリコ」
 ずるずるずるずる。
 ぐびぐび。
 ごっくん。
「トリコってば。聞いてっか?」
 夕食の時間。山盛りの食事をガツガツと貪る姿はいつものトリコだ。しかしその食べる速度は明らかに異常だった。何かに急き立てられるように大量の食事を文字通り流し込むと、ごちそうさま、と席を立って駆けていった。サニーは何度も話しかけようと試みたのだが、トリコの耳にはまったく届かなかった。
「んだよアイツ! オレのこと完全無視! ありえなくね!?」
 憤慨するサニーを横目に、ゼブラは黙々と7杯目のラーメンを啜っている。誰もかまってくれないのが面白くなくて、サニーはふくれっ面でコラーゲンゼリーにスプーンを突き立てた。
 
 先月、夕食後に3人でかくれんぼをした。鬼になったサニーは、まずトリコを探した。トリコはいつも食べ物のある場所に隠れているから、すぐに見つかると思ったのだ。
 ところが、食堂周辺も、厨房の中にもトリコはいなかった。途中、飼育棟で蟹ブタと取っ組み合いをしていたゼブラを捕まえ2人で建物中を探したのに、トリコは見つからなかった。その日消灯時間過ぎに帰ってきた彼をどんなに問い詰めても、隠れ場所は教えてくれなかった。
 その日を境にトリコの様子がおかしくなったのだ。周囲の人間は気付いていないようだが、いつも行動を共にしてきた2人は彼の変化を見逃さなかった。
 トリコは朝から晩までそわそわと落ち着きなく、ゼブラやサニーが話しかけても上の空。そして夕食を大急ぎで流し込むとどこかへ走り去る。戻ってくるのは消灯時間ぎりぎりだ。
 グルメ細胞との適合度合いが高く、身体能力が抜きん出ているがゆえに同年代の子供達から浮いている彼らは、いつも3人でつるんでいた。他の子供を誘っても、スタミナが足りずにすぐに音をあげてしまってつまらなかった。
 たった2人ではかくれんぼも缶蹴りもできない。サニーもゼブラもすっかり退屈していた。
 
「ん?」
 ぶーたれてテーブルに突っ伏していたサニーは、周囲のざわめきに気付いて顔を上げる。視線の集中する先に目をやると、禿げ散らかした顔の汚い老人がぞろぞろと白衣の集団を引き連れて食堂に入って来たところだった。
「最悪。特殊医療班じゃねーか。クソジジイまでいるし。めったに研究棟から出てこないくせに何で今日に限って来んだよ」
 サニーが悪態を吐く横で、ゼブラも白衣の集団を睨みつける。
 特殊医療班は施設内での評判がすこぶる悪い。表向きは病人や怪我人の治療と新薬の研究開発を謳っているが、その裏ではおぞましい動物実験を繰り返しているともっぱらの噂だった。特に、交配実験により生み出された奇形生物の標本は悪趣味な金持ちに高く売れるらしく、『特殊医療班以外立ち入り禁止』と書かれたドアの奥から夜な夜な響く獣の咆哮を何人も耳にしているという。非道な人体実験の噂も絶えることはなかったが、証拠がないことと、裏の顔を覆い隠して余りある医学的功績の為、上層部も表立って彼らを追及することはない。
 サニーもゼブラも適合者として様々な検査をされていた。そのほぼ全てが思い出したくもない苦痛や激痛を伴うものばかりで、何より一番腹が立つのは一切人間扱いされないことだった。2人とも特殊医療班の人間が大嫌いだった。
「も、行こうぜ。アイツらいたら飯不味くなるし」
「ああ」
 すっかり冷えた食事をかき込み席を立つ。出入り口付近で振り返ると、白衣の集団は食堂の中央を陣取り、サニーがクソジジイと呼んだ老人を囲んで何やら楽しそうに談笑していた。他のテーブルから遠巻きに気持ち悪いものを見るような目を向けられていることには気づく様子もない。
 
「あーつまんねーの。トリコは何か変だし、特殊医療班には出くわすし。今日は良コト何にもねー」
 廊下を歩きながら、サニーは頬を膨らませてこれ以上ないくらいの不機嫌さをアピールしていた。今日は長風呂してトリートメントを完璧にしてから寝よう。そう心に決めてゼブラを振り返ると、随分と後ろの方で立ち止まっていた。
「ちょ、ゼブラまでおかしくなっちまったのか?」
 駆け寄って頭一つ背の高い彼を見上げると、ぼそりと呟きが降ってくる。
「……現場を押さえるしかねえな」
「はあ? 何の話だよ。テメ無視すんな!」
 ゼブラはサニーを一瞥し、ニヤリと不敵に笑った。
「明日、トリコを捕まえるぞ」
 
 
 
Fin.

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2011/09/24 21:34 | トリコ。

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