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2024/05/19 11:03 |
【17 years before】青髪の少年
昨日アップロードした内容、よく考えたらココしか出てないですね。
トリココ期待された方すみませんでした。

庭時代捏造(2)です。






 目が覚めた。時計を見ると短い針が5を指している。
 
 もう一眠りしようと毛布を被り直したが、腹の虫が正直に鳴き声をあげるので、少年は結局起き上がることにした。
 彼はいつも腹を空かせていた。三度の食事はきちんと食べている。むしろ他の子供達の何倍も食べ、時には人の皿にまで手を伸ばすほどに。しかし成長期の彼にはそれでも足りず、彼はよく厨房に忍び込んで冷蔵庫を漁ったり、庭の果物を片っ端からもいで食べたりしていた。
 今日もあくびを噛み殺しつつこっそりと裏口から厨房に入り、慌ただしく動き回るコック達に見つからないように冷蔵庫からハムのブロックを二本失敬する。再び忍び足で厨房を抜け出すと、ガツガツと齧りながら庭に出て、彼は大きく伸びをして朝の空気を体いっぱいに吸い込んだ。
 ひやりとした風の匂い。朝露の匂い。日差しを待つ草や木々の匂い。目覚めたばかりの鳥や獣の匂い。パンの焼ける匂い。この世界に溢れる様々な朝の匂いを、全身で感じる。
「ん~、たまには早起きもいいもんだな」
 ボロボロと食べカスをこぼしながら、少年は自分の髪の色と同じ青空を仰ぎ見た。
 
 朝食の時間になり、少年は駆け足で食堂に向かう。同年代の子供たちに混じって列に並び、トレイに山盛りに食べ物を載せて席に着くと、両サイドに見慣れた顔が腰を下ろした。カラフルな髪を肩まで伸ばした少年は、隣の二人のトレイを見て顔を顰める。
「マジ、朝からパネェ量食うな、前ら」
「オレはこれでもいつもより少ないぜ。朝ハム食ったし。サニーこそそんな量で足りんのか?」
「オレはオレの細胞が求めるつくしい食い物しか食わねーの」
 サニーと呼ばれた少年のトレイの上には瑞々しい果物と少量のサラダ、ハムエッグしか載っていない。対する二人のトレイには、肉とパンと温野菜で構成された山が聳えていた。
 青髪の少年はおにぎりを丸ごと口に入れ、器用に梅干しの種だけをトレイの隅に飛ばす。赤髪の少年は骨付き肉を豪快に噛み千切り、咀嚼しながらスープを啜っている。
「お前もオレやトリコを見習えよ。偏食してるとチビのままだぜ」
「ゼブラはでかすぎんだよ! トリコはオレと身長ほとんど同じだし! ってか口に物入れたまましゃべんな!」
 青髪の少年・トリコと赤髪の少年・ゼブラは競い合うように食べ物を口に放り込む。しゃべりながらも食べ物を口に運ぶ手は止まらず、口いっぱいに頬張っては時折飲み物で流し込んでいる。そんな食べ方でちゃんと味が分かるのかどうか疑問だが、もはや当たり前の光景なので周囲も今更注目したりはしない。そんな彼らに呆れつつ、一つ年下のサニーはハムエッグを口に運ぶ。
「あ、オレ宿題やってない! ゼブラ写させてくれ!」
「チョーシ乗んな。オレがやってるわけないだろ」
 二人は顔を見合わせると、大急ぎで残りの朝食をたいらげた。
「サニー、オレたち先に行くわ。今から急いでやれば半分はできるかもしれないし。また後でな!」
 言うが早いか、トリコとゼブラはトレイを返却口に放り込んで走り出す。
「トリコ、どっちが先に教室に着くか競争しようぜ」
「いいぜ! オレが勝ったら、今日こそかくれんぼだからな!」
「なめんな。どうせオレが勝つから今日も缶蹴りだ!」
 同い年の二人は何かにつけて勝ち負けを争っていた。息を乱すこともなく、少年達は全速力で廊下を駆けていく。
 
 
 
 これが、物心ついた頃からの、トリコの日常である。
 
 
 
Fin.

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2011/09/12 20:56 | トリコ。

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