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2024/05/19 11:19 |
【17 years before】黒髪の少年
せっかく妄想するなら、公式設定出る前にいろいろやっとけ的な感じで。
ぼそぼそと書いてみました。
ちゃんと続くかはわからないんですが、とりあえず書き始めてみます。

トリココ庭時代捏造です。






 目が覚めた。時計を見ると短い針が5を指している。

 真っ暗な部屋の中で少年は毛布をたたみ、ベッドの縁に腰掛けて水を一杯飲む。それから枕元にキチンとたたまれていた帯状の布を手に取り、自分の目を覆って後頭部で結んだ。
 ほどなくして、ドアをノックする音が5回。開いたドアから差し込む光を布越しに感じたのか、彼は首をドアの方へと向ける。しかしすぐにドアは閉じられ、室内は入ってきた男の持つ燭台によって鈍く照らし出された。
 面積でいえば決して広くはないその部屋は、ベッド、サイドテーブルの上に水差しとコップがひとつ、一脚の椅子、点滴スタンド以外には何もない。どの壁にも窓はなく、入り口の正面の壁にドアが二つあるのみ。
 燭台がテーブルに置かれた音を合図に、少年は目隠しを外した。短く切られた黒い髪。密度の濃い睫毛に縁取られた黒い瞳。くすんだ緑色の手術着は彼の体に不釣り合いな大きさで、大人用のものを羽織っていることがわかる。そこから覗く手足は、日の光を浴びていないことが一目瞭然の病的な白さ。
 やや紫がかった唇を開き、少年は声を発した。
「おはようございます、ドクター」
 ドクターと呼ばれた男は、薄くなった白髪が申し訳程度に頭部を覆い、染みだらけの顔をした老人だった。医療用のゴム手袋をはめ、汚い紙袋を持っている。それを足元に置くと、かさついた唇を歪ませて声を発した。
「おはよう、私の最高傑作」
 少年はおもむろに服を脱ぎ、下着一枚の姿でベッドに横たわる。ドクターは少年の脈を取り、あばらの浮き出た細い体を隅々まで撫で回し、手元の手帳に何かをびっしりと書き込んでいる。そしておもむろに注射針を取り出すと、黄色の液体の詰まったそれを少年の腕に突き刺した。ゆっくりと液体が体内に注入されている間、少年は眉ひとつ動かさずに、じっと天井を見つめている。
 男が針を抜いて1分後、少年の体が細かく痙攣し始めた。その姿を確認し、男は少年に声を掛ける。
「これが何か分かるか?」
 苦痛に顔を歪めながらも、少年は答える。
「……主に、含まれて、いるのは、ブンガロトキシン、それからデンドロ……トキシン……。ゾンビタイパンのっ、毒だと、思います……」
「正解だ」
 浅い呼吸の中で歯を食いしばる姿を気に掛ける様子もなく、男は紙袋から新しい点滴のパックを取り出し、スタンドに取り付けた。そしてビニール袋に入った無数のサプリメントを二つサイドテーブルに載せる。
「抗体は2時間もすればできるだろう。終わったら食事を取って、点滴をしなさい。今日は検査をするから、4時には風呂に入っておくように」
「はい……ドクター」
「目を隠しなさい」
 少年は言われたとおりに、震える手で目隠しをつけた。男は新しい手術着を足元に投げると、少年が脱いだ服をつまみ上げて紙袋に押し込み、燭台を回収して部屋を出て行く。暗闇が再び少年を包み込んだ。
 
 震えが収まり、呼吸が落ち着いたのはちょうど2時間後。少年は目隠しを外して上半身を起こし、サプリメントの袋を一つ開けて水で流しこむ。それから服を着て、慣れた手つきで点滴を左腕に刺し、目隠し用の布で固定すると、重たい体を引きずりながら、左側のドアを開けて中へと消えた。
 
 
 
 これが、4年間繰り返されている、ココの日常である。
 
 
Fin.

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2011/09/11 22:15 | トリコ。

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